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刑務所慰問を行う芸人から学ぶ、距離を縮める方法とは?

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刑務所・少年院の慰問を累計千回以上、多い時にはひと月に九か所も回っている落語家、桂才賀(かつらさいが)師匠の本を読みました。

刑務所通いはやめられねぇ―笑わせて、泣かせる落語家慰問

受刑者を相手に笑いを取れた理由が印象に残りました。ポイントは、相手との距離を縮めること。笑いの取り方だけでなく、普段のコミュニケーション、営業やプレゼン・講演などの仕事にも応用できると思います。

 

敵を知れば百戦危うからず

師匠は、最初の刑務所慰問で、思うように笑いが取れなかった。そこで、以下のように考えたそうです。

連中が何を思い、どんな生活を送っているのか。まずそれが分かんないことには、笑わすことなんかできないぞ、ってなことで、勉強もずいぶんやりました。何でも敵を知れば百戦殆うからず、だ。

 

※ P4 はじめに より

最初の刑務所慰問から帰ってきたらすぐに、刑務所のことが書いてある本を読みあさったそうです。今のようにネットに情報が溢れている時代ではなく、刑務所に関する本も少なかったので、情報を得るのに苦労したようです。

 

受刑者との距離を縮める

連中の ”専門用語” が一番効くわけよ。よくそんなこと知ってるなという驚き、そして共感が、笑いにつながるんだよ。

 

※ P51 二章  ”くりこみ” の大行進ではじまる慰問の朝

 

慰問の舞台がはじまる前は、だいたい、教育課長からの紹介があるそうです。その後、師匠は壇上に上がって、教育課長からマイクを受け取ります。

「すみませんね、 ”願箋” も出さないで」

これだけでドッカーンと笑いが来ちゃうわけ。

願箋とは、受刑者が様々な申し出をするときに必要事項を記入し、指印を捺して提出用紙のこと。

~省略~

慰問で来ただけの落語家が、そんな言葉を知っていて、口にする。しかも、教育課長に面と向かって。こりゃあ、おかしいわけです。

受刑者を相手にいきなり落語を演っても、受けるものではありません。落語家が活動している寄席のお客さんは、落語を聴きに来ている、笑いに来ています。

対して、受刑者は落語なんか聴きたくない、聴かされているという受け身の姿勢です。非常にハードルが高い状態で落語をやらないといけません。

師匠は、ツカミで刑務所の専門用語をネタにすることで、受刑者との距離を一気に縮めたのです。これで、落語を聴いてもらう雰囲気を作りました。

 

笑いは一番のストレス解消

師匠は刑務所慰問でギャラをもらっていません。…というか、刑務所側がギャラを出せないそうです。なぜ、お金にならない刑務所慰問を行っているのでしょう?

もちろん、刑務所にいる彼らは、自分の罪に対して反省と償いをするのが、本分ってことは間違いない。ただ、日々のストレスやイライラを抱えたままじゃ、心を鎮めて自分の心と向き合うなんてできやしない。

ちょっと格好つけた言い方になって照れくさいけど、まぁ、そんなことも思ったわけ。やっぱり、『笑い』が必要だろうと。

 

※ P50 二章  ”くりこみ” の大行進ではじまる慰問の朝

受刑者はとにかく行動の自由がありません。トイレに行くにも、ちょっと横になるにも、刑務官の許可がないとできない。想像以上のストレスを抱えている。出所後の不安もあります。

 

笑いというのは緊張をほぐしてくれます。わたしの一番のストレス解消も、お笑い番組を見ることです。人間にとって ”笑い” は、非常に大事なものです。

受刑者に笑ってもらうために、お金にならない刑務所慰問を続ける。落語に出てくる江戸っ子のように ”粋” な活動をされているなと思いました。

 

★★★

刑務所慰問の活動だけではなく、刑務所の裏話などが書いてあります。また、少年院にも行っていることから、現代の子どものことについても語っています。いろいろと考えさせられる中身の濃い本です。

刑務所通いはやめられねぇ―笑わせて、泣かせる落語家慰問

刑務所通いはやめられねぇ―笑わせて、泣かせる落語家慰問